2007.12.21

『家守綺譚』

こんにちは。
卒業論文の提出が終わって、気が抜けたようになっているモトです。
ものすごく余裕を持って終わらせていたくせに、
提出が終わると一気に肩の力が抜けてしまいました。

『家に帰るまでが遠足』と同じで、『提出までが論文』ということなのでしょうか。
……まぁ実際は、このあとにまだまだ
口頭試問(論文の内容について先生方から面接で質問される試験)などが残っていて、
全部は終わっていないんですが。


さて。今回は本を紹介します。
夏休みくらいに、表紙の雀に惹かれて……
いわゆるジャケ買い(本にも使える言葉なのかしら)したものです。

『家守綺譚』梨木香歩(新潮社●平成18年10月)

主人公の綿貫征四郎と、広いお屋敷のような家の敷地内で起こる不思議の話です。
28の短編からなっていて、庭のサルスベリが征四郎に恋をしたり、
庭の池に河童が来たり、山で狸に化かされたりが、ほのぼのとした文章で書いてあります。
文体が可愛いので、読んでると癒されますよ。

私は最初に読んだとき、全く内容を知らずに読み始めていたので、
主人公がそんな怪異に出会っても平然とそれを受け入れることに違和感を感じました。

タイトルに≪綺譚≫と付いているんですから、
幻想的な内容だと察していいはずなんですが……
まぁ、雀にしか目が行ってなかったと、そういうことにしておいてください。
とりあえず、中身はファンタジーです。


一番面白いなと思ったのは、「野菊」という話です。
主人公に恋をしているサルスベリに名前が付きかけるシーンがあるのですが、
そこが面白いんです。


  ―リサベルス。これはあまりに豪勢だな。いっそのこと最後のスをとって……。
  ―リサベル!やめてくれ。
  ―いいじゃないですか。女っぽい名だ。おい、リサベル。
  すると恐ろしいことに、サルスベリはうなずくように
  樹幹全体を大きく一度上下に揺らしたのだ。突風が吹いたのかもしれない。
  しかし窓硝子は揺れなかった。
  ―ほら、喜んでいる。
  誰がそんな名で呼べるものか。


大体がこの話のように、思わずにやりとなるような話が多いです。
なんだか疲れたなというときに、読んでみてはいかがでしょうか。

※注意※
短編集ですが、全体で話が繋がっていたりするので、
最初から読むのがいいですよ。


投稿者 モト

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