2007.9.20

今回は新書を紹介しまーす

もう夏休みも終わりで、とうとう後期の授業が始まります。
夏休みの締めくくりとして、ちょっと真剣な記事にしてみました。
といっても、相変わらず本の紹介ですけれど。笑

今回紹介する本は、新書!!大学生っぽい!?笑

タイトルは、『憲法九条を世界遺産に』(2006/8・集英社新書)です。

「爆笑問題」の太田光と、中沢新一の対談です。
ちょっと前にベストセラーとなりました。
うちはいつも読むのが時流から遅れている・・・。笑


こういう賛否両論ある問題に関する本の紹介は少し不安なんですけれど、
あえて良かったと思える点を、正直に、そして簡潔に書こうと思いました!!

うちの感想に対して賛否両論あるでしょうし、誤解も生まれると思います。
そもそも紹介する本人が、この本を誤解をしているかもしれません。
はたして、うちがこの本を紹介なんかできるのか、という不安もあります。

でも、なんにせよ、みなさんにとって自分の考えを見つめ直す機会になればいいと思いました。


まず、うちはタイトルの印象から、
「憲法九条はめっちゃ大切やでー大事やねんでー変えたらアカンでー」
って主張しているだけの本じゃないん?って思ってたんです。
キレイごとばっかり言ってるだけの本じゃないん?って。

だけど、「世界遺産」ってそういう意味だけじゃないですよね。
読むまで気づきませんでした・・。
以下、本から一部引用しながら、内容を紹介していきたいと思います。


  中沢「世界遺産というと、イリオモテヤマネコみたいな感じがしますね。
     野生動物の最後の珍品として守っていかなければいけないという感じ。
     たしかに僕も、平和憲法は世界の憲法中の珍品だと思います。(中略)」
 

つまり、日本国憲法の九条は珍しい存在だと言っているんです。
ただ単に、九条は大切だ、という意味から生まれた「世界遺産」という言葉ではありません。
九条が存在しているのは、奇跡と言っても過言ではない、という表現までされているのです。
それだけ人間というものは、戦争をしてしまう生き物なんでしょう。

この本では、戦争は否定するだけじゃなく、
まず肯定しなければならない、と述べられています。
また始めの方では、愛があるからこそ戦争が生まれるのだ、とも言われています。
愛はただ暖かくポカポカしたものじゃなくて、諸刃の剣である、と。

このあたりの論理が気になる人は、是非手にとって読んでみてほしいと思います。
下手に短縮して書くことに抵抗も感じるし、実際に読んで、肌で感じてほしいです。

九条がとても珍しいものと結論づけたうえで、
何故その珍しいものを大事にしなければならないのか。
二人は以下のように書いています。


  太田「この世に神様がいて、未熟な人間は俺のところまで来れないだろうと言うなら、
     いや、俺たちはそっちまで行って、超えてやるぞという人生じゃないと、つまらない。
    
     (中略)人間は、秩序を構築できる生き物であると、
     少なくとも生きる態度で示したいと思う。
     その証が憲法九条だと僕は思っているんです。」
 
  中沢「その意味でいうと、憲法九条は修道院みたいなものなんですよね。
     修道院というのは、けっこう無茶なことをしているでしょう。
     普通の人間が暮らせない厳しさの条件の中で、人間の理想を考えている。
     修道院は労働もしないし、そんなもの無駄なような気もしますけれどそも、
    
     人間にとって重要なのは、たとえ無茶な場所であっても、地上にそういう場所がある、
     ということを、いつも人々に知らせているというところにあるでしょう。
    
     普通に考えたらありえないものが、村はずれの丘の上に建ってるというだけで、
     人の心は堕落しないでいられる。そういうものがあったほうが、
     人間の世界は間違いに陥らないでいられるんでしょう。」


引用が多いですが、この部分がうちにとって欠かせないところでして・・。
一番印象に残っているっていってもいいくらいで・・。

うちなりに要約すると、
九条は無茶な憲法だけど、その無茶がこの世にある限り、
まだ人間は踏みとどまれるんではないか。
その無茶を諦めてしまったら、それこそもう人間は元に戻れない。
だから九条は大事な憲法だ、と述べられているんです。

ただ「戦争はいけない!九条は大事だ!」と叫ばれるより、すんなり納得ができました。

また、日本という国をドン・キホーテとサンチョ・パンサに例えているのも面白い。
九条を持ち続けている日本がドン・キホーテ。
「ミサイル撃ち込まれたら、どうするんですか」と疑問を抱いたり、
「武力を全部捨てるのはさすがに危険っすよ」と自衛隊をつくる知恵を見せたりする
サンチョ・パンサ。

ドン・キホーテだけでも、サンチョ・パンサだけでもダメで、
この二人の二人三脚があってこそ、
今までの近代国家の珍品、非戦の国・日本があったんですよね。


・・と、まぁ、引用部分でわかるように、対談形式でとても読みやすい一冊です。
難しい言葉を並べられるよりも、問題と向き合うことができます。
気構えずに、気楽に手にとってみてほしいと思います。


投稿者 アリ

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