2007.7. 2

『テムズのあぶく』

『テムズのあぶく』 武谷牧子 2007年2月 日本経済新聞出版社 

日本経済新聞社が創刊130周年を記念して創設した「日経小説大賞」の第1回受賞作。

うちは本屋でアルバイトをしているのですが、よく高齢の男性から問い合わせされ、気になっていた一冊です。
新聞でもよく広告が出されており、評判も高いので、図書館から借りてきました。


ロンドンで偶然出会った、46歳の女性舞台演出家・聡美と50歳で日本電機企業のロンドン駐在員・高岡。
お互い離婚歴があり、分別ある一人の人間として、躊躇しつつも二人は付き合い始めます。
彼等が付き合いだしてから、死別するまでの濃密なストーリーがこの一冊に凝縮されていて、圧倒されました。
読み終えてみると、タイトルからして、なんだか重さを感じます。笑

今までうちは、高校生はもちろん、20代の恋愛小説も多く読んできました。しかし、このように成熟した男女の恋愛小説はなかなか読むことがなかったので新鮮でした。
「共感できるんかな・・」って思っていたんですけれども、興味から恋愛に発展するまでの過程や、デートのときの緊張は、何歳になっても同じで、すんなりと読み終えることができました。

この小説で面白いのは、二人の年齢を感じさせる、高岡のちょっと寒いダジャレや、聡美のセカンド・バージンの描写です。高岡がする砕けた返事や、付き合い始めたばかりの二人が別れるときにする仕草など、ついつい「古っ!」「寒っ!」と、笑ってしまいました。
二人の付き合いの丁寧な描写や、気の利いた会話、そして作品全体に漂う気品が、定番なストーリー設定を独特なものにしています。また、お互いの仕事に対する姿勢や、仕事でのストレスなどを描くことで、大人としての二人の立場をしっかりと読者に意識させ、甘いだけではなく、渋みのある恋愛小説となっています。

ありふれた恋愛小説に飽きている方、ちょっと変わった恋愛小説を読んでみたい方、手にとってみてください♪

投稿者 アリ

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