研究室探訪

一瀬 和夫 研究室

一瀬 和夫 教授
文化財学科

『古墳時代のシンボル
-仁徳陵古墳』
発行/新泉社
定価/1,575円 93頁
2009年2月発行

著書『古墳時代のシンボル-仁徳陵古墳』の内容や執筆の動機・きっかけなどをお聞かせください。

 この本はシリーズ「遺跡を学ぶ」のなかの1冊で、発掘調査で発見された遺物や情報を中心に、発掘調査の感動とおもしろさが伝わるように書いたものです。
 執筆のきっかけは、出版社から応神陵古墳か仁徳陵古墳について書いてほしいと依頼があったことです。応神陵古墳は15年くらい発掘調査に携わっていましたので、最初はそちらについて書こうと思っていました。しかし、陵墓のために古墳の周囲の情報だけで古墳内部の情報がないため、日本一大きい仁徳陵古墳について書くことにしました。現在は陵墓となり一般の立ち入りはできませんが、江戸時代からの記録や明治5年に前方部を発掘調査した記録が残っています。当時の堺県が調査し、石室内部や石棺の様子がわかるので、それを中心に執筆しました。また、出土品のうちアメリカへ渡ったと伝えられる鏡や刀などの紹介、最近の成果として、宮内庁による内部の調査報告や墳丘周りから出土した埴輪や日常雑器の須恵器の紹介もしています。
 従来の著作には、それぞれについて書かれたものはあるのですが、網羅的なものはありませんでした。仁徳陵古墳を知りたい場合は、この本を読めば、というものを書きました。

考古学のおもしろさは何ですか。

 文字で書かれた歴史だけ勉強していると、文字が残っていない地域は歴史がなかったということになってしまいます。考古学は、発掘すれば昔の人が残した「もの」が出てきて、どんな地域でも対応できます。日本の津々浦々、いろいろな歴史を解明できるという魅力がありますね。

今後の研究活動として、何を考えられていますか。

 高校生の頃から興味のあった仁徳陵古墳については、関係する古墳を発掘して研究を進め、近つ飛鳥博物館在職中に模型をつくり、一般の人たちに見てもらうこともできました。また今回、研究の成果をまとめた本も出版することができました。
 次は、研究対象とする時代や遺物など、その範囲を広げたいと思っています。旧石器時代にまでさかのぼり、人が猿のような体だった頃に住居はあったのかとか、また移動や運搬の手段として用いられた舟の研究も進めたいですね。

本学の学生に望むことを教えてください。

 学生には好きなものを調べていくこだわりをもってほしいですね。本や教科書に書かれたものを読んで、わかったと思わないで、さらに深く知ることをしてほしい。自分で時間をかけて勉強・研究すると、本質的なものが見えるようになります。その時間をもてるのが大学生の頃だと思います。蓄積は力になるので、これからの人生、何ごとにもあきらめず興味のあることに突き進む力を身につけてほしいですね。

インタビュアー
三井 彩 さん  文化財学科 4回生

 2回生の夏に経験した測量調査がきっかけで一瀬ゼミを選びました。この調査は大阪府枚方市の牧野車塚古墳の等高線を測っていくものでした。同じ高さの土地を探し、マークしていく地道な作業です。全体がわからないまま測量をしていましたが、最終的につながったものを見て感動しました。また、牧野車塚古墳の調査結果をまとめた「文化財調査報告」の作成にも携わりました。一瀬先生はいろいろな機会を与えてくださるので、考古学に対する興味が尽きません。