研究室探訪

阪本崇研究室

現代ビジネス学部
現代マネジメント学科
阪本 崇 教授

プロフィール

1999年京都大学大学院経済学研究科経済政策学専攻博士課程修了。
専門は教育経済学、文化経済学、公共政策。

なぜ先生は経済学を研究しようと思ったのですか?

 高校のときに社会科が一番好きだったのですが、なかでも経済がいろいろと動きがあっておもしろいかなと思ったのが理由です。

先生は公共政策が専門ということですが、それは、どのようなことを研究するのですか?

 財政学には租税論、経費論、予算論、公費論という4つの分野があります。私はそのなかの「経費論」を専門としています。経費論とは、お金の使い道について考えていくものです。公共政策のなかでも、教育や文化や芸術へのお金の配分の仕方などをテーマとしています。たとえば、スウェーデンやオーストラリアにおける奨学金の返済は、就職後、所得が一定の額に達しなければ始まりません。また、所得の額に応じて、一定割合で、長期にわたって少しずつ返済することができます。日本では、短期間で返さなくてはならず負担感が大きいですね。平等な教育機会をつくるためにも、海外の制度を、日本でも取り入れたほうがいいのではないかというようなことを研究しています。

今の日本の教育についてどう思われますか?

 今の日本の学生は、アルバイトをしすぎだと思います。家庭の事情もあるとは思いますが、学費を全部稼いでいる学生もいて、授業や大学生活がおろそかになっている。しかし、そのせいで本当の力を育てられない学生もいます。大学の学費の数百万のために、将来稼げるはずの数千万円を失っていることもあると思います。ですから、もっと奨学金制度を充実させ、平等な教育機会をつくらなければなりません。同時に、歴史や地理に加えて、社会に出て役立つ経済や法律を学んだり、国語では小説だけでなく論説文を多く読み、数学でも現実への応用を理解させるなど、教育を社会生活と結びつけていくことも必要だと思っています。

先生自身が、大学生の教育にあたって心がけていることなどはありますか?

 「興味を持ってもらうこと」を一番に心がけています。身近な話題や意外な事実を提示して、少しでも関心をひけるように工夫をしていますが、常に試行錯誤の連続ですね。

今後の日本経済はどうなるのでしょうか。

 総じて「お金に目がいきすぎ」だと私は思っています。今の日本経済は、経済成長が起こって景気がよくなるという考え方で株価ばかり気にしています。しかし、人はお金があるだけでは幸せにはなれません。人間にとって本当に必要なものは何かを見きわめながら、経済を動かしていくことが大事です。たとえば、福祉など、今の日本の社会で不足しているものにどうやってお金を集めるのかをしっかり考えなくてはなりません。現在、核家族化している日本では、家族の介護などで一つでも家庭の構成条件が崩れると、負担が重くかかる構造になっています。生活が成り立ってこそ初めて経済はうまくいくので、もっと安心して生活できる社会を設計する必要があります。

今後はどのような研究をされる予定ですか?

 世の中にはお金が集まりにくい分野というものがあります。教育や医療や介護などの、人間がいないと成立しない分野です。それはコスト削減ができないため、高止まりする傾向があります。そういう分野には、なかなか人はお金を使いたがらない。しかし、携帯電話ならば、年間約7万で70年使うと考えると、一生に7×70=490万以上のお金を使うことになるのに、抵抗なく使います。大学や医療分野は、今後お金を流していかなければならないので、そうした部分にお金を適正配分するためにはどうしたらいいのか、ということについて研究していく予定です。

経済学を学ぶことは、将来どう役に立ちますか?
どんな視点を身につけられるのでしょうか?

 個人の生活に直接的に役に立つというものではないのかもしれません。ただし、たとえば自分の支払う税金がどこに使われているかなど、社会がどのように動いているのかということを理解し、大局的な視点を養うことができます。また、経済学を学んでいると、理屈で物事を考えることが多いため、論理的思考力が身につくと思います。

インタビュアー 山西 奈那  さん
現代ビジネス学部 現代マネジメント学科 3回生

 ゼミではコンテンツ産業を学んでいるので、専門分野である財政学のことを真剣に話してくださる先生の姿は新鮮でした。経済学というとすごく難しいイメージで学生からも敬遠されがちですが、社会のお金の仕組みがわかるおもしろい学問だと思います。財政学についての授業を受けてみたいと思いました。